金沢に遠征して、撮影旅行を企画しましたので、まとめておきます。
テーマは「クリエーターの創造性を解き放つ」企画作りです。
△クリエーター達の創造性を最大限発揮してもらうときの条件とは何か!
採算・収益を考える
ストックフォトセッションの企画では収益性の見通しを最初に考えます。ストックフォトセッションでは顧客が見えないからこそ、企画段階からの収益性の見通しは必須条件です。
今回組むことになった8X10さんは、フィルム時代からカメラマンとして経験を積まれているクリエイターさんです。PIXTAお気に入りクリエーター登録が1,000を超えています。
8X10さんは定額販売をしていません。定額販売はもろ刃の剣です。たくさん数が売れて露出が増えるのは間違いないのですが、利益率が厳しく(一枚売れても手取り20円)、購入する側からすれば「画像がそこら中でかぶってしまうかっこ悪さ」に苦慮します。例えば弊社はデザイン会社ですが、自分の顧客のHPにおいて、PIXTAから画像を購入する時「せっかく購入するなら定額販売をしていない画像を選びましょう。その方が希少価値がありますからね。」と説明しています。
低額の定額制がPIXTAの会社としての収益を伸ばしているのは間違いないのですが、個人クリエーターにとってみると、「売れる」「売れない」の二極化が進む、厳しい市場になりつつあります。
- キーポイント
- 豊富な経験(ヴァリエーションの豊かさ)
- 1,000を超えるお気に入りクリエーター登録
一日目 薬局バックヤード
金沢での撮影を決めた時、収益面を考えて二日間観光的なストックフォトではまずかろうという判断がありました。ストックでの売れ筋を押さえた上で、その二日目に金沢観光関連の写真を取る事が大切です。ストックでの売れ筋とは、ビジネス、医療、ファミリー、観光。この医療の分野をがっちり押さえます。一日目は薬局のバックヤードで800万円はすると言われる最新型の分包機を中心に撮影をします。
薬剤師が働くバックヤードには医療用麻薬が常備してあることから、撮影の許可取得が難しい。よって、弊社顧客のはなの木薬局さんに依頼して、金沢市の「はなの木薬局田上店」をお借りできるか打診。薬剤師立ち会いのもと、無事バックヤード、フロントヤードでの撮影に成功しました。
また補助金申請の段階からかかわっていることもあり、事前にPIXTA本社の動画担当者様からアドバイスをいただけたことも心強かったですね。モデル自らがその特性を生かして、企画提案を行っていくことについて聞いてみたところ
いや、全く問題ないでしょ。海外の売れているStock creatorsは全てプロダクション形式で、各個人が役割を分担していますよ。
と言っていただけたのも心強かったです。
二日目 金沢観光旅行
北陸新幹線が2015年3月に開通してから、富山・金沢のインバウンド需要は順調に伸びているようです。[1]
東京からの旅行客が増えている、ということは東京都内で作成されるツアー用のチラシ、広告、web素材等での利用が見込まれますね。二日目の素材は「ミドル夫婦の金沢観光」に決まりました。
以下はPIXTA内で、金沢を検索し、人物で絞り込みを行った結果のyoutubeです。自社コンテンツのF&Sがほとんどで、若い女性達の画像しかありません。今回の企画とかぶっていないのは収益的に魅力的です。
一方でなぜ金沢のような素敵なロケーションがたくさんあるところで、人物撮影がなされないのかも考えてみました。
ひとつには売れる画像になるための演技の出来る人物モデルが東京に集中していること。地方ではモデルを安定的に依頼できない事情がありますね。またスチールはともかく動画になるとさらに難しくなるでしょう。友人とか知り合いでたまたまモデルを見付けた、という事例はあるかも知れませんが、継続的に人物モデルを撮り続けるのは難しいでしょう。人物画像が売れるためには細かいところに気を配り、且つリラックスして笑顔が作れるモデルが必要です。
△指先まで神経の行き届いた演技ができる人で、さらにストックOKな方は東京に集中してます。
△JALのようなナショナルブランドでの採用事例は今後の収益確保のためにも心強いですね。
私も素人ながらPIXTAモデルを始めてから一年半が経ち、回数が50回を超えた辺りから演技に多少の自信が持てるようになりました。地方にいては、これほどの撮影回数を短時間でこなせないでしょう。今回長野からお呼びしたモデルさんも、まずは経験を積みたいがための出演でもありました。
成功の鍵
わざわざ北陸までやってきて、重い機材を運びながら、次々と指示を出すカメラマンとヴィデオグラファー。一日経ち、疲れが残るはずの二日目も衰えることの無い集中力。そのわき出るクリエイティビティの源泉は何だったのだろうか。私も後ほど、「どうしてそんなに元気だったの」と問われた時に答えに窮するものでもありました。
初日の薬局撮影が無事終わり、ビジネスホテルに戻って、荷物を整える。夕飯にみんなで出かけましょう、ということになり、午後七時にロビーに集合。ホテルのフロントで海鮮の美味しいお店をリサーチしていざ出発です。
私は寡聞にも知らなかったのですが、金沢の市街には浅野川と犀川が北西に向かって流れており、金沢城趾を中心として、用水路が引かれていました。後から調べたのですが、用水路は55本、全長にすると150キロにも及ぶとのこと。
△金沢の用水[2](PDFが開きます)
こちらのウェブサイトの高低図解説にもあるように、400年近く前に、かなりの工夫がなされたようです。
曽我の第一印象は「あれ、市街にもかかわらず、あらぬ方向から流れる水量が半端ない。酔っ払いならおぼれ死にそうな勢いだけど・・・なんでここに?」というもの。そんな用水に導かれるままに見付けたのが二日目の撮影場所。46万を超える人口を擁する県庁所在地の都市で、よどまない川の流水量に驚いたのでした。
- 成功の鍵:それは・・・
- 歴史を感じさせる、フォトジェニックでオリジナルなロケーションで
- 演技力の高い人物撮影を行い
- 収益の確保ができそうな予感があるから。
なのではないでしょうか。
川を見て興奮した曽我は調子に乗って「明日の撮影ですが、朝六時から始めませんか!こんなイイ場所なので、寝てるのはもったいない」なんて提案してみましたが、8X10さんは大人のお返事「いやいや、朝六時は早すぎでしょ。女性モデルさんはメイクなどの準備もあるので。」それは理解できるのですが、なんとか朝のフレッシュな空気感が欲しいと思った曽我は食い下がります。
「では七時にロビー集合ならどうだろう」
(なんでコイツは今回こんなにハイテンションなんだ)と訝られつつ、女性モデルさんも「いいですよ(苦笑)」のお返事。疲れ切ってしまわない、ぎりぎりのパフォーマンスを引き出す事ができたのかも知れません。ご無理を聞き入れていただき、ありがとうございます。
提案
スチールについては、観光利用を目的とした場合、春夏秋冬でのシーンを取りそろえると使いやすいですよね。今回は新緑の春。であれば、
- 浅野川や犀川とか花火などを強調した夏バージョン、
- 紅葉狩りの秋バージョン、
- 降り積もる雪と温泉など
△魅力の金沢を全季節で取りそろえる事ができれば、観光チラシ・駅構内サイネージで使い易くなります。
動画についても同じことが言えるでしょう。特に動画は後からの修正が難しいから、シリーズで揃えておくと金沢の情緒を作る時に重宝されるはずです。今回の撮影イメージの収益確保の見通しが立つことが前提ですが、紅葉の秋、もしくは冬の温泉などでもう一度撮影するように企画してみたいところです。
最後に
今回の遠征撮影は以下のみなさまのご協力により無事終える事が出来ました。
ここにクレジットとして掲載させていただきます。
8X10さん
folyさん
PIXTA ミドルモデル Hさん
PIXTA 女性モデル Tさん
はなの木薬局田上店 勝村様
むちゃなご要望にお応え頂きまして、本当にありがとうございます。
蛇足
実は北陸の旅情に興奮して居酒屋で食べ過ぎました。
日本海の刺し身盛り合わせが美味しいのはもちろんですが、モズク、漬け物といったサイドメニューまでなぜか味わいが深い。塩に旨味あり、水が清らか。「何を食べてもまた次が食べたくなる」の無限ループ。
膨満感に包まれたまま、帰宅の途についたのですが、つくばに帰ってからも、お腹の調子がよろしくない。三交代といえども、往復1,400キロの長距離運転を終えた次の日であり、GWの中日。
うんうん唸りながら昼間から布団に入っていると、ツマが一言。
ようやりおる。まぁ、苦労を共にした方が絆とか友情も深まるって言うしね。
確かに、採算性だとか効率だとかを念頭に置いてしまったら「不安要素が多いから、やっぱり辞めとこうか」とボツになってもおかしくない企画だった。そうではなく「面白いからやってみよう」という気持ちをクリエーターたちと最後まで共有できたのが大きかった。
胃腸の調子が狂っても次の日けろっとしたからには食あたりとかではなく、隠れて美味しいものを食べてしまった故の、ツマの小さな呪いだったのかも。
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- https://dentsu-ho.com/articles/4036
- http://www4.city.kanazawa.lg.jp/kids/01/keikan/yousui.html