いつもお世話になっております。香石先生とお話をしながら、印象深い言葉がありましたので、メモしておきます。
「書道をするにあたって、ときどき、切り貼りを望む人がいます。つまり、様々な紙に書いて自分の納得のいく文字だけを拾い集めて、切り貼りして一つの作品にできたらどんなにいいのに、という発想です。」
「でも、そのように切り貼りして仕上げた作品には余り価値がありません。どんなに整っているように見えても、その作品には奥行きがないのです。なぜか。」
「それは一つの紙に向き合って、その瞬間を生きたことによって生じる緊張感が、その切り貼りの作品−−−いえ作品とはもう言えないでしょう−−−、つぎはぎのこぎれいな文字たちには、もう消え失せているからです。」
「一枚の紙の中で、一見して崩れていると思われる部分、欠点の部分が実は上手く欠けた文字を後押ししているのです。」
ふーむ。さすが深いですよね。いつもデジタルの修正の効く世界にいると忘れがちな緊張感のお話でした。