フリーライティングで第一の思考を汲み上げろ

ライティングの基本の一つ「時間を決めて手を動かし続けること」について解説します。

手を動かし続けること

△この記事のもとになっているのは、米国の作家ナタリー・ゴールドバーグさんのこちらの本です。

Natalieが上記の記事で解説するライティングのコツは七つあります。一番目に出てくるのが「手を動かし続けること」。
10分間という時間を区切って、ひたすら手を動かし続ける行為を推奨しています。

手を動かし続けることの目的は、「内なる編集者」に耳を傾けないようになることです。

文章を書くという行為を妨げる一番の敵は誰でしょう。

ほかならぬ自分のこころの抑止力、文章を切り刻んで編集作業を行おうとする二次的なこころの動きなのです。

時間を決めて手を動かし続けたら、そんなこころの声を聞くまでもなく、どんどんと筆が進む。ノートに書き続ける、PCならキーボードを叩き続ける事ができる。

心が最初に思いついたこと、すなわち「第一の思考」というものにたどりつけるようにすることが目的です。第一の思考とは、単なる自分の思いつきではなく、たくさんの人が無意識に感じていること。普遍性がある思考なのだそうです。

私はまだその境地に達したことは、二三回しかないのでなんとも言えないのですが、其所へ至る道筋を止めるものがたくさんあることは分かります。

抑制したい欲求を振り切って、無意識のレベルにある言葉を組み上げることができたら、それは覚醒した退屈しない文章になります。

だれてしまいそうな時間を区切って、10分間集中して手を動かしてみよう。


△普遍的な第一の思考はそこにある。ただ汲み上げるだけ。掘り続ける作業。それが10分間手を動かし続ける練習です。

二つ目は「管理しないで」

第二のルールはLose Control.

コントロールしないようにせよ。

とか

管理しない!

とかに訳せると思います。
第一の原則「手を動かし続けること」にも繋がっている大切な概念です。

管理しようというのは内なる編集者の働きですよね。Natalieの言っていることは、単にやみくもに文章を書くようにと言っているわけではない。第一の思考に繋がっていこう。そのための訓練を具体化しているのです。

SNSの時代ですから、素人が何か言おうものなら、四方八方から批判中傷が飛んできますね。
それを日頃から読んでいて血肉となって内部に取り込まれていると

「こんなこと書いたらまずいかな」とか「反対意見もあるしなぁ」とか批判的な編集者の意見が入り込んできます。

一端これに耳を傾けてしまうと、文章は一つも続いていけません。恐れをなしてしまうからです。

手を動かし続けながら、管理しようとしないこと。頭に浮かぶことをひたすら文字に起こしていく。

編集作業、読み返す作業は一週間とか二週間とか後でいいようです。だからこそ、このカテゴリーもコンポストブログとしています。手を動かし続けた結果、でてきた答え、文章の流れみたいなものが貯まっていくことが大切です。

フットボールの選手が一瞬のきらめきのために何時間も何日も練習に練習を重ねるように文章を書くこともすぐにできるわけじゃない。

あらゆるカテゴリーに通用するような文章を書くための、その基礎がための練習としての原則その2。それが「管理しない」なのです。

大体こころの中で思いついたことって、オソロシイことだったり、つまらないことだったり、わざわざ文章にするまでもないことだったりしませんか。まともな大人だったらそれを否定し続けるから、文章は一つも前に進まない。

管理しないで。ひたすら書き続けて。Natalieの決めの四単語があります。それは “Shut up and write(=黙って書け)” 以上。

△どっちにしても、黙って書くしかない。言い訳はいいわけよ。(=’Shut up and write anyway. Don’t use anything as an excuse.’)

三つ目は「具体的に」

三つ目のルール。それは具体的に = Be specific となります。

物事を記載するのに具体性をもたせることは、大きなことを言う前には必須の項目です。

簡単に一般的な言及にならないように、それを言うために具体的な事実を積み上げる事が必要です。

歯の浮いたようなお世辞をいうのではなく、しっかりと観察する。
観察した事から素直な自分を出していく。

何かを書くとき、大きく見せようとして一般的なことを述べてしまったりしがちです。
観察眼を鍛えるには、目の前に見えていることをまずは記載してみるといい。

例えば、この文章を打っている環境はこうなっています。
10分間のタイマーをiPhone 8 plusで計りながら、エスプレッソと水を入れたコップを2つ配置した。
コワーキングスペースで大きな机を独り占めしています。お客さんが少ないのでこれでもいいかな、と開き直っています。
ファイルが40ぐらいあって、それを整理している途中です。
セブンイレブンで買ってきたサンドイッチと粒あんマーガリンのゴミがまだ机の脇におきっぱなしです。
MacBook Proからはコードが出ていて、ペンタブと電源へとつないでいます。iPhone 8plusにはwi-fiでつないでいます。イヤホンも繋がっています。
普段もちあるきの三角かばん。手帳を開いて三つ目の原則を確認して、これについて書いてみようと思い立ちました。

これを後から読むと、きっとモバイルワーカーの典型的な働き方が目に浮かぶかもしれません。そこで「モバイルワーカーの職場環境とは」みたいなタイトルを後から付け加えることができます。

同時に、あまり自分に厳し過ぎてもいけません。
「具体的に」ってナタリーは言うから「庭の樹木」と書いてしまう自分はダメだ、と判断しないこと。
「樹木」って買いて、そこで止まらないよう。次のフレーズは「カエデ」と言おう。

△ぼんやりした言葉を使ってもいい。その後に具体的な名前を言おう。フルーツ、じゃない。リンゴだ!

四つ目は「考えないで」

四つ目のルールは「考えない」こと。

手を動かし続けて、コントロールせず、具体的なものごとを書き続けていくと、考えることはできないのかもしれない。考えないことが重要です。

大人になるとどうしても最初に思ったことがあっても否定してしまいますよね。

くだらない文章でもいい。
ばかみたいな文章でもいい。
具体的に手を動かして、書いていけばいいのだ。
考えなくていい。
思いつくままに書いて行く。

ただ書いているという行為がどうしてルールになっているかというと、第一の考え「とにかく手を動かし続ける」にたどり着くためなのです。

最初に考えた事を、否定する。修正する。考え直す。

そうすると世間体が気になって、どうでもいいことをそれっぽく語るだけになってします。

考えない。書き続ける。10分間という時間を決めたなら、その時間内においてはどんどん書き続けていく。

曽我はMacに書いて行くと適宜改行を行いながら500文字から800文字は書けています。今日一日あったことや、人との交流で考えたこと。まずはその辺のメモ書きを記録していくことから始めたらいいのかも知れない。

五つ目は「文法を気にしない」

10分間集中して文章を書きまくっているとき、文法は気にしなくていいです。

漢字の間違いや、てにをは、についてもひとまず気にしなくていいです。
まずは10分間どんどん手を動かし続けることが大事なんです。

現在はPCで文章を書く人が多いと思います。推敲は後でしよう。今はとにかく手を動かすことだけ考える。

推敲は後からです。では、後から読み返す行為をするとき、どれぐらい待ったらいいのでしょうか。

Natalieは二週間待ってみるとよいよ、とアドバイスしています。

脳内の忘却のシステムが働き、書いた文章を客観視出来る期間が二週間なのでしょう。

一体この作者は何が言いたいの。

間違いだらけの文章の中でも、言いたいことの核心はなんだろう、と自分自身でいぶかしがることができるようになるまで寝かせること。

六つ目は「最悪な文章を書いてもいいよ」

六つ目は最悪の文章を書いてもいいよ、と自分に許すこと。

最初から評価を気にしてしまうと何もできない。

「この世の中で最悪の文章を書いてもいいのだ」と自分に呪文をかけてください、と著者はいいます。

この世の中で、の部分は広い範囲でも狭い範囲でもいい。

これを書いているレストラン内で、この地域で、この県で、という具合でもいいし、なんならこの宇宙で、この地球で、日本列島で、みたいに範囲を広げてもよいです。ポイントは、バカな文章ができ上がることに恐れないこと。

著者はアメリカ人なので「最初の一ページ目からアメリカ文学最高の本を書いてやる、なんて身構えると腰が引ける」という表現を使っています。日本でいうなら、谷崎、芥川ばりの流麗な文章を書く必要はないんだよ、という意味合いですよね。

作品を作らない天才より、書き続ける凡人であれ」ということなのでしょう。

フリーライティングの書籍紹介

△参考にしている本はこちら。英語が得意な人なら翻訳を買うまでもなく、非常に分かりやすい文章ですらすら読めます。日本語版は残念ながら絶版になっているようですね。5000円を超えていてお高いですが良書であることは間違いない。

継続するためのメソッドがあります

「なんでもいいから自由な発想で、考えずに書いていけ」と連呼されても長続きさせるのは至難の業です。

継続が難しい、という事情はNatalieも経験上分かっているみたいで、この名著「Writing Down the Bone」の後、何冊も続きの本を書いています。

△”Wild Mind” という次なる本。日本語の翻訳はないようです。タイトルを訳すなら「野生のこころ」かな。

この本では、前著の「クリエイティブ・ライティング」のおさらいが書かれていて、序文で原則論に立ち戻っています。

1~6番目の原則は同じ。そして7番目に念押しの文章が入っていました。

七つ目は「頚静脈を狙え」

英語では ”Go for the jugular.” と表現されています。
直訳すれば、頚静脈を狙え。
意訳すれば、急所を突け、となります。

この箇所は七番目の最後で、大切な部分になるので全訳してみます。

何か恐ろしげなことが浮かび上がっても、それに向かいなさい。
そこにエネルギーがあるわ。
さもなくば、何か神経に触ることの周りをぐるぐる書き回って時間を過ごすことになるでしょう。
真実を避けているのだから、それはおそらく抽象的で口当たりのよいものかもしれない。
ヘミングウェイはこう言いました。
「懸命に書いて、傷みが何かを明らかにせよ」と。
心配しないで。それで死んだ人はいない。
泣いたり笑ったりするかも知れない。
でも死にはしないわ。

被せるように、どうしてこの七原則が重要なのか。それが支える「手を動かして書き続けること」が重要なのかをまとめています。

若い頃テニスをしていたんだけど、腕の筋肉が弱いから、それを補うためにあるべきフォームより長めのグリップでプレイしていた。
それが悪い癖になって、以後上達できなくなってしまったの。ラケットの正しい握りは基本なのよ。
書く練習においては、この七つの原則が基本です。自分の思ったような楽な方法に迷い込んでしまう前に、これに慣れてください。
信じて。それは水を飲むのと同じぐらい基本のことなの。古い教えはいつでも必要なもの。どんな状況でもそれに従って。そうすると安定するから。安定というのは、ライターにとってまれなことよ。

この他にも続けるためのヒントが沢山あるので、また少しずつ紹介いたします。

続けるためのヒント 1: “What I really want to say”

文章を書いていても、何だかまとまらない。

自分自身に退屈している。
それが分かっていながら、どうしていいか分からないとき。

解決法がある、とNatalieはいいます。

それは、文章を書いている途中、いきなり – ダッシュ記号を入れて、こういいます。

“What I really want to say is….”

これは日本語で言えば、「とにかく私が言いたいのは・・・・」となります。

深いところに入っていけないもどかしさを、この文章を差し込むことで解決していきます。

私自身文章を書いて今やってみますね。

コロナ禍はまだまだ続いていて、中学生の娘と小学一年生の息子の学校が始まらない。
いや、始まってはいるけれど週に一回とか二回とか、午前と午後とかの分散登校になっている。
私の仕事はweb上で完結することが多いので、自宅で子供たちの面倒をみることになる。
一緒に遊びつつ、掃除をして、キッチンのお皿を片づける。
クライアントからのメッセージに気を配り、Onlineのミーティングをしている最中、息子にはAmazon primevideoをみせておく。
これでいいのかな、という不安を抱えつつ前に進むしかない。
とにかく言いたいのは、
言い訳をしたくないってこと。不況にあえぐ人たちが沢山いるのは実感としてひしひしと伝わってくる。
今できることを今に集中してやるだけ。メモは取ろう。賢くそして柔軟に。

みたいな感じになります。途中で「とにかく言いたいのは、」と入れることで、文章に拍車をかけられる。

具体例をあげ話が詰まってきたら、「とにかく言いたいのは、」とおいてまとめていきます。

続けるためのヒント 2: “孤独”

文章を続けられない理由の一つに、孤独、があると思いませんか。

深く深く自分を追い込んで、文章を綴っていく。
ふと周りを見渡す。だれもいない。懸命に綴った文章も誰が読むかも分からない。
自分が一体何に打ち込んでいるのかが分からなくなる瞬間です。

文章を書いている時間が孤独。だから、文章が書けない。

こんな理由で文章が書けなくなってしまう人もいるでしょう。

Natalieの本には孤独についてのコメントがあります。

Natalieは禅の思想を深く取り入れていて、アメリカの地元に師匠がいました。
片桐老子という方です。師匠に弟子が質問します。

「文章を書くことで、深いところにいける。そうおっしゃったのでがんばっているのですが、あまりに孤独です。文章を書くことが孤独なんです。」

そうすると師匠曰く

物事を深くなせば、すなわち孤独なんだよ。私も孤独です。でもその孤独に振り回されないように。それはただ孤独というに過ぎない

と。そうですね。文章を書いている間は、自分の中に入り込んで孤独です。
でも止めないでください。それに振り回されないように。それはただそこにある孤独です。老子は続けます。

孤独ということに何か問題でも?

続けるためのヒント 3: “日記との違い”

このヒントでNatalieの深い考察がスパークします。

「日記」と「フリーライティング」の違いは何でしょうか。
Natalieはこれを明確に分けています。
ものを書くのだから、日記もフリーライティングも同じなんじゃないかといぶかる生徒からの質問にNatalieはこう応えます。

日記は思考や、熟慮、自己分析といったものについて書くよね。
フリーライティングの要諦は「考えないこと」です。

論理的な考え方のもっと下の、私のでもないあなたのでもない、ただのこころがオリジナルなところに降りていく行為。それがフリーライティング。ちょっと五分でも座禅してみてください。何も考えないなんてできないでしょう。つまり、そこには考えが私たちを通り過ぎていくのであって、それを書き留める行為がフリーライティングなの。この10分間のフリーライティングを通じて、大きな世界に繋がること。何にも繋がっていない。だからこそ、小説やショートエッセイにも利用できるわ。

同時にまさに禅問答じみてくるのですが、こんなことも言っています。

全ての言葉の裏に、言葉はない。言葉がないから、何かを書くスペースが生まれる。フリーライティングをするとき、自己は消えて、貴方が言葉そのものになり、ペンを置くと書いている貴方もどこかに行ってしまう。

意識的に思考をまとめていく日記とフリーライティングは違います。

だから今日も、Just shut up and write!(=いいから黙って書き続けろ).
他の人にも繋がる可能性のある、こころの深みから水を汲み上げられますように。

△継続のためのヒント満載の一冊。続かなくなったときに、手に取り、刺激を受けるための本です。

記事公開日: 2020年05月14日
最終更新日: 2020年06月04日

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