NiziU と一緒に四季を巡る: 一歩一歩、自分のペースで

曽我と同世代、アラフィフ中高年男性のみなさん、こんにちは。

突然ですが「若いアイドルは全部同じ顔に見える」ってことないですか。


▲次々に表れては消えるアイドルの名前を覚えられない。もう夢中になる年でもないし・・・

でも、アイドル分析を通じて時代が観える。SNSを中心とした現代令和の文化を俯瞰できる視座を手に入れることができる、となったら話は別です。

最近どうも老眼になりつつあり、細い文字を読むのがつらくなってきた。子育ても大変だし、親の面倒もみないといけないし。職場では部下もできたけど、話合わんし俺もいよいよおっさんど真ん中だな・・・そんな我々中高年男性に元気を注入する、韓国発の日本人ガールズグループが2020年に誕生しました。

その名はNiziU.

え、最後に大文字が来て綴り崩れとるし、そもそも読めない? 老眼のせいではありません。最後の大文字Uは意図的です。このUはあなたのYou.

そうニジュー。Need You! 誰が? We need you!(ウィニージュー)

SNSにより双方向の交流がより身近になったアイドル活動を行うグループの名前からして現代を表しています。K-POP大手事務所JYPが日本人のガールズグループを作るべく発足したオーディションの名前が虹プロジェクト。ローマ字読みのNiziの最後にみんなのUを配して生まれたグループ、それがNiziU。虹プロジェクトの最初から決っていたのか、それとも途中から考えたのか。秀逸なネーミングですね。

この記事ではNiziUを深堀りして、SNS文化花開く令和の世を俯瞰します。

▼デビュー曲「Step and a step」MV. デビューまでの道のり、その扉を開くまでの過程が可視化されて『それぞれの歩幅』が見事表現されています。

ガールクラッシュな魅力とは

ガールクラッシュ、という言葉を聞いたことありますか。

英語のcrushには「潰れる」意味の動詞があり、名詞は「ときめき」。心臓が一瞬ぐしゃっと潰れて、きゅん、となるニュアンスなのでしょう。

ガールクラッシュとは、女子(=ガール)が惚れてまう(=クラッシュする)「可愛く、かっこよく、憧れの対象になる」という意味を持ちます。K-POPが語源で、主にK-POPアイドルを形容して使われていましたが、日本でも2018年ごろから使われるようになりました。元来肉食系女子の形容に使われていましたが、2020年では「仕事も遊びも一生懸命で、男子に媚びず、女性の友達を大切にしながら自分のスタイルを貫く」というようにマイルドな意味合いを帯びています。

韓国も、令和を迎えた日本も年功序列の概念が崩れつつあり、異性に媚びることなく、自分自身を表現できる女性が人気を博すようになりました。NiziUの楽曲が全てガールクラッシュのカテゴリーに当てはまるわけではないでしょう。ですが、生きづらい現代を健気に駆け抜ける女子のハートを鷲掴みできる実力と親しみやすさ、という意味でガールクラッシュな魅力をNiziUは持っています。

K-POPのマーケット戦略

2016年に韓国が米国製のTHAAD ミサイル(終末高高度防衛ミサイル)の配備を決定して以来、中華民国は報復措置をとるようになりました。韓流文化への規制を韓流禁止令などと言うそうです。中国側としてはそのような法的措置は一切とっていないとの主張ですが、事実として中国における韓流文化の露出が激減したことは確かです。そこでK-POP業界としてもその輸出の矛先を日本やアメリカに向けざるを得ない、という実情がありました。

またインターネット回線が世界中で整うことにより、地域に限定されず映像や文章が即座に翻訳されて、エンタメコンテンツをたのしめるようになりました。

その国に受け入れてもらう為にタレントをバスに乗せて地方のどさ回りをさせ、手配りでCDを売る、なんてことをしなくてよくなったのです。

楽曲とダンスはプレデビューという形でネット公開してしまう。
ハイレベルのダンス、歌唱力と、日常の姿をそのまま垣間見れるギャップに若者が嵌まります。
一部のダンスをやってみた動画がTik Tokや、INSTAGRAMリールやLINEストーリーに流れ出す。
視聴者が支払う料金はここまで基本無料です(通信費用などを除く)。

身近に感じる友達のようなアイドルがスマホの中にいる。
ダンスはきれきれで、歌唱力もプロレベルのしっかり訓練されたもの。
そこに尊敬できる人柄や、魅力的なエピソードの詰まったコンテンツが配信されたら、だんだんと嵌まってきます。

収益はダウンロードやサブスクはもちろんですが、東京ドームなど大きな箱でのライブなどでどかーんと儲けるところと、ネットでの投げ銭システムを利用したファンクラブ限定ライブの定期開催などが予想されます。Youtube動画の再生回数が一億回を超えたのを受け、JYPの株価は年初より2倍ほどになりました。企業の株価とは将来にわたるトータルの利益を現在価値で割り戻したものですから、NiziUの収益性の期待値が高く評価された結果でしょう。

基本無料配信することにより、広い範囲の地域、幅広い年齢層に受け入れてもらえるアイドルが作りやすくなったのです。

政治的な理由により日本市場を意識せざるを得なくなった。テクノロジーの助けを借りたら容易に世界を目差せるようになった。そこでアーティスト魂に火がつき、日・米でのオーディションを通し、J.Y.Parkさんが考える本質的なタレントを探そう、という流れになったのです。

J.Y.Parkさんの説得力

大谷翔平選手が高校球児を集めてベストナインを選んだなら
とあるコンテストなりオーディションなりの成功の胆になるのは、一体誰が審査するのか、という命題にちゃんと応えているかどうかです。

日本で有名なコンテストと言えば、年末のM-1です。最初は島田紳助と松本人志が審査員として番組を盛り上げていました。島田紳助にはスキャンダルがあり引退を余儀なくされましたが、未だに続くM-1では、大きな発言力と影響力を持つまっちゃんが審査し続けています。

虹プロジェクトを引っ張るのは、韓国エンタメ界の大手事務所JYPの代表、J.Y.Parkさんです。

正直K-POPに全く疎かった私は、その業績・偉大さが分からず視聴していました。番組が進むにつれ、その説得力ある言葉の数々に圧倒され、ダンス指導や歌唱の評価ポイントの具体性が明らかになるにつれ、「あぁ、これは現役のアーティストがプロとしての仲間を募っている番組なんだな」と合点しました。

アラフィフ男性に分かりやすく、野球で考えたらこうです。

「野球の甲子園大会を世界レベルで行うことになりました。日本代表選抜メンバーを集めます。
主任選考者は大リーグで活躍する、大谷昇平選手。ヘッドコーチはイチローです。
腕に覚えの在る全国高校生を一万人ほど応募し選考し、最後は合宿をして13名を選抜していきます。」

もちろん私の架空の妄想ですが、仮にこんな全世界大会があったとして、日本代表高校生を決める模様をTV番組で放送するとなったら、その選考過程をみたいと思いませんか。大谷選手がどんな選手の何を評価するか、そして技術陣トップ[1]のイチローが何をみているのか。その言葉を堪能してみたくなります。ポイントはヘッドコーチがイチローであること。虹プロジェクトでも技術面を担当するヴォーカルトレーナーやダンストレーナーの韓国女性は率直で厳しいです。辛辣なコメントを聞いていると、こちらが泣きたくなるような激しいダメ出し[2]が頻発します。

虹プロジェクトは、地上波ではなくHULU(インターネットの配信サービス)でした。スポンサーに過剰に配慮することなく、思ったことを発言できるところも現代のネット配信事業と相性が良い。

インターネットのおかげで世界中の視聴者に向けてアイドルをアピールできる。だからこそ大切なのは本質です。J.Y.Park

彼が考える本質とは何か。このオーディションの核となる考え方をトレースして頭に入れたあと、個人個人を見ていくとその選考理由がだんだんと明確になっていきます。

自分らしさ、とは『核となるキューブの意味』
虹プロジェクトが評価点として重要視する項目は最初から明確に提示されています。

  • ヴォーカル = 歌唱力ですが、ただ上手に歌えるだけではなく、その歌詞の中に人になりきって「語るように歌えるかどうか」。
  • ダンス = 動きは一つ一つ正確に。感情の流れに沿ってメリハリをつけて表現できるかどうか。
  • スター性 = 観た後に、観る前よりもその人が好きになれるかどうか。
  • 人柄 = 練習期間中のトレーナー達の態度評価と、練習生同士での友情投票により決る(本人達は評価対象となることを知らされていない)

を核において、その外にチームワークなど技術点を加えていく方針でした。「立派な人格を持って欲しい。世の中に良い影響を与えて欲しいから」と語り、倫理観として三つの要素が番組内で紹介されました。

  • 真実 = カメラの前で堂々と出来ないことはカメラ外でもやらない。包み隠すことのない状態。
  • 誠実 = 自分と向き合ってどれぐらい追い込んでいけるのか。
  • 謙虚 = 態度や言質の遠慮、謙虚さではない。心を謙虚にして、他人の短所ではなく、その長所だけを見つめて感謝すること。

の三つです。外に感謝し、内を磨き、ありのままの状態でいられること。言葉自体は目新しくもなく当たり前の概念ですが、10代女性に向けて目を見ながらこれらを伝えられる芸能関係者がどれぐらいいるでしょうか。高尚で抽象的な倫理観のお話では、結局のところ何を言うのかより、「誰が」言っているのかが肝心です(仮に上記の例で、生意気盛りの高校球児に面と向かって「道具は家族のように大切に扱え」とか言ったとして、説得力があるのは大谷選手とかイチローの他何人もいないでしょう)。

ただし一端舞台に上がったらそれらを全て忘れて「この特別な私をみんなに見せるんだ」という意気込みで、気持ちや感情を視聴者に伝えるのが大切。J.Y.Park

季節の巡りに合わせてNIZIUをご紹介

見事デビューの機会を勝ち取ったメンバーの紹介をしていきます。九名をランキング順に並べて紹介したサイトは多数ありますが、正直中高年の頭に入らないですよね。

若い女性アイドルみんな同じに見えるからな~・・・という情けない気持ち分かります。でもざっくりみんな同じという認識では、違いから生まれる個性を楽しむことができません。そこで我々の頭に入り易くするために、九名のメンバーを日本の四季に分けてみました。

まずは中心となるリーダーのMAKOを覚えます。そしてカメレオンのように常にハモりをきかせ、変幻自在の活躍を見せるMAYUKAを紹介します。

その後、芽吹きの春から、凍てつく空の冬まで、季節を巡りながらNiziUメンバーを紹介していきます。


NiziU Members/ Pre-Debut Digital Mini Album Make you happy』 M/Vより

▲NiziU メンバーの概念図

オールラウンダーMAKOとカメレオンMAYUKA


MAKO – NiziU Pre-Debut Digital Mini Album Make you happy』 M/Vより

MAKO – 真っすぐに石を穿つ赤い情熱
MAKOは毎日トレーニング日誌をつけ、毎朝体重を量り、日々努力を怠らず絶えず進化している。
ここまで一生懸命になれる最大の動機はなんですか?というJ.Y.Parkさんからの問いに対して、

「練習生としてショーケースには何度か立たせてもらったのですが、準備が大変でもステージに立った後の達成感がすごくて、その時間をもっと味わいたいなと思いがんばっています」MAKO

と答えています。それを聞いたJ.Y.Parkさんは「デビューして成功しても、貴方という人は変わらない」と言っています。同士を見つけた感慨ぶりでした。

MAKOの強みは、ぱっと見で理解できないかもしれない。彼女はオールラウンダーと呼ばれるように、四つのキューブ(ヴォーカル、ダンス、スター性、人柄)の全てを高いレベルで獲得しました。逆に意地悪く解釈すれば、全ての面で飛び抜けて優秀という項目がない。

  • ヴォーカルなら、高音域のインパクトでNINAに敵わない。
  • ラップもRIMAに軍配が上がる。
  • ダンスはRIOのしなやかさには勝てないのかも知れない。
  • スター性ではAYAKAの天然さに敗北。
  • 演技力ならMAYAの表情の方が深い解釈を表現できている?

こんな優劣を彼女は一切気にしない。MAKOがユニットのメンバーに入っているだけで、自然な形で他のメンバーの輝きの目盛りが一つ上がる。中心には苦労の影を一切見せない、誰もがそのトータルの実力を認めるMAKOがいる。

個人ダンスレベルテストの評価が全てを物語っています。

オーディションで涙が流れたのは初めてです。なんだか感動的だな。「体をしっかり管理しないといけない」というのはこういう体になっているということ。速いし、力強く、しなやかです。J.Y.Park

尊敬に値する、得難いリーダーといってよいでしょう。J.Y.Parkさんの「この虹プロジェクトの力になりました。支えてくれてありがとう」というコメントに納得です。

セクシーで、且つ難度の高いタンブリングを含めたダンスナンバー「24時間/Sunmi」を披露した個人評価では、会心の演技であったにも関わらず、惜しくも2位。MIIHIの「Nobody/Wonder Girls」に破れました。

今回一位と二位で優劣をつけることに意味は見いだせない。あえて理由を探せば目の前の僕の心を捉える力、「訴えかけてくる力」に微妙な差がありました。J.Y.Park

この言葉をきっと、MAKOは日記に強い筆圧で書きつけているはずです。個人的には後5年経って、24才になった彼女のソロダンスをもう一度観てみたい。表向き爽やかでリーダーシップのある人格者。年を重ね、磨きのかかった「24時間」の妖艶さがMAKOのダンスに備わったら、表裏のギャップが鮮烈な、魅力溢れるPOPスターとして無双状態のはずだ。

2020年12月2日発信のデビュー曲『Step and a step』で可視化された扉までの姿は、迷路の中にあります。

ダークな色味のドレスに身を包み、常に道を探して小走りしている。JPY練習生で先に韓国に飛び込んで、練習を積む日々が表現されています。

自分のコンセプトが分からない。MAKO

コンセプトは要りません。ありのままの自分でいてください。J.Y.Park

迷路の先に青いドアを見つけてノブに手をかけています。自然体のリーダー、一番上手くて一番努力するMAKOが表現されていました。

自分だけのペースで/MAKO

と後半に歌う「だけのペース」の部分で高音が来ますが、正確な声がクリアに響きます。個人審査のとき、24時間足りない/Sunmiを披露して見せた後半での正確な高音域に磨きがかかっています。押し付けでない、でも訴えかける何かがある。


MAYUKA – NiziU Pre-Debut Digital Mini Album Make you happy』 M/Vより

MAYUKA – ハモる陽気なカメレオン
東京合宿のShowcaseで、まだキューブを一つも集めていないMAYUKAでしたが「大変ですけど、今は楽しいが勝っています。」とコメント。本番を迎え、パフォーマンスの後評価が下ります。

僕はMAYUKAさんが目に入ってきました。J.Y.Park

このコメントが入ったとき、練習生達の控室が写るのですが、RIKUが号泣します。

キューブを一つもあげていないのに、まるでキューブを全部獲得した人のように明るく、自信を持って、楽しそうにやっている姿がとても不思議でした。だから「上手くやらなきゃ」「がむしゃらにやらなきゃ」「見せてあげるよ」というような感じでもなく、本当に楽しんでいる感じだから体の力も抜けて、ダンスの動作も大きくなっていました。一人でとても楽しんでいる。キューブは一個もないのに心から楽しんでいる。J.Y.Park

審査員席に呼ばれたMAYUKAはキューブを一挙に三つ獲得。控室からは拍手が巻き起こり、RIKUは涙が止まりません。この反応を見ていると、MAYUKAは周囲の胸を打つ様な、ひたむきな自分なりの努力というものをこつこつ続けられる人なのだと分かります。

最高の実力を見せてくれたからではなく、態度と心構えがこのような結果を作り出しました。J.Y.Park

個人レベルテストで披露した Like This/Wonder Girls の評価ではさらに別の基準が求められました。

歌もダンスも下手ではない。なのに舞台に馴染んでいない。まだ自分をアマチュアだと思っているからです。楽しもうという気持ちと、自分は特別だ、私はスターになる資格のある人であるという自信は少し違います。実力の差ではなく、考え方の違いです。J.Y.Park

声の響きが他の誰とも違い、力強さと透明感を兼ね備えた非常にまれな声質の持ち主です。ヴォーカルトレーナーも特別巧いと太鼓判を押す歌声も、まだ本人の自信に繋がっていません。

MAYUKAさんはすでにダンスも歌も上手いです。でもそうは見えないのがもどかしい。J.Y.Park

J.Y.Parkさんが厳しいコメントをするときは、相手にプロとして舞台に立てるかどうかを見極めているとき。逆に言えば、成長して欲しいと願うからこそ、核心をついた、難易度の高い要求がなされます。

MAYUKAの自分の声とダンスに自信が出てくるのはチーム2K5を組んでからです。MAKOから「一回自分の殻を破ってみよう」とアドバイスされて、何か吹っ切れたMAYUKA。表情をがらりと変えたMAYUKAが歌い出しのラップを担当し、その背後からMAKOがせり上がって出てくる場面はこの番組のハイライトの一つです。

地元にいるときダンス教室の費用を親に出してもらい、もう一つ別のダンス教室にも通いたいからとバイトまでして自分でその費用を捻出した、というエピソードが語られています。バイトしながらダンス教室を二つかけもちして、そこまでしていたダンスでも評価は低いまま韓国に渡ります。バイトしなくて踊れるだけで幸せ、という練習生のアマチュア精神を克服し、プロとしての変貌を遂げ、歌唱力まで開花させる。

周囲の友達を安心させるような、裏表のない穏やかで明るい性格の持ち主が、自分なりの努力でデビューを勝ち取るのを見守ることができました。
2020年12月2日発信のデビュー曲『Step and a step』で可視化された扉までの姿は、森の中でした。

地面に敷き詰められた葉っぱの上をハイヒールで歩き、大小さまざまな扉が既に目の前にあります。ランプが取り付けられ、灯があるものの、自分は大きなリボンをつけたりして、場所にそぐわない格好でさまようMAYUKA。

自分が舞台に立って正面にいるときには、自分が一番という気持ちがないといけない。どこを目差したら良いのか、が見えてきた気がします。MAYUKA

デビューの扉をあけるとき、扉は七色に輝いて明滅しています。これはどんな姿にでもなれる器用さを表現しているのでしょう。

RIMAの後のラップパートで、

自分だけの手で作るんだ明日を/MAYUKA

と続けます。自分だけの手で、という歌詞がMAYUKAの現在を表現しているのでしょう。

芽吹きの春 AYAKA, RIO, RIKU


AYAKA – NiziU Pre-Debut Digital Mini Album Make you happy』 M/Vより

AYAKA 桃が花開くのに理由はないから
冬が終わり、気温が暖かくなるにつれ、桃や梅の木に花が咲きます。
その理由が分かりますか。太陽の周りを地球が公転したから?
なぜ公転するのでしょう。それは重力と遠心力のせい?
なぜ重力や遠心力があるの・・・?

春になると理由なく芽吹きが始まります。理由は分からないけど開こうとする小さな芽を観ていると「がんばれ!」って応援したくなる。うきうきとこころ踊り出す。そんなビジュアルの持ち主がAYAKAです。

明るさとほのぼのさが特徴と聞けば、いやいやそれは異性受けを狙ったものなんじゃないの、という邪推もしたくなります。果たしてホントに天然なのか、実は狙ったあざとさなのかを見極めるのによい映像が、彼女のテニス講座です。

一風変わった「AYAKAのテニス講座」をぜひネット検索しましょう。
それを観てしまったあなた。きっとAYAKAに「夢中になっちゃう夢中になっちゃう」。

AYAKAは自らを評して「魅力がたくさんあるはずだし、あきらめない性格なので最後までがんばります」と言い切っています。J.Y.Parkさんに「切実にアイドルになりたいと願ってますか。」「そのためにこつこつ努力できますか」という問いに間髪いれず、ほとんど食い気味に「はい」、「はい」と答える姿や、映像に残る地声での豪快な笑い声には大物感が漂います。

今のところ悪目立ちしない安定したダンスと声を手にいれて、メンバーの中では高身長のビジュアル担当という佇まい。今後彼女がヴァラエティに呼ばれツッコめるRIKUあたりと一緒に出演したら、容貌のイメージからかけ離れたあまりの天然ぶりに、視聴者は度肝を抜かれることでしょう。

2020年12月2日発信のデビュー曲『Step and a step』で可視化された扉までの姿は、時計の回廊をゆっくり進んでいました。周りの時計だけが早回しになっています。正直ダンス・歌唱力ともにトレーニングが足りていないAYAKAの焦りに似た感情を表現しているようです。でも道は堂々とした一本道なところがAYAKAらしい。スター性は最初から備わっていて、それを疑わない自分が表現されているのでしょうか。

既に特別な君を誇るべきだから。AYAKA

このパートを歌うとき、背景の時計の長針がゆっくりと巡り、そこに影が写り込みます。こちらを振り向くAYAKAは安心したように微笑みます。実力が足りない、時間が足りない。でも毎日練習はしているのだし、きっと自分のペースはこれでいいんだ、と肯定できることが大切ですよね。

春のイメージのAYAKAがまずは微笑んでいく→冬のイメージMIIHIはまだ不安だ。でも全員で手を取り合っていこう、というStep and a step全体のストーリー展開が秀逸です。


RIO – NiziU Pre-Debut Digital Mini Album Make you happy』 M/Vより

RIO きれっきれのソウルダンス
RIOはダンスに定評があるといいますが、NiziUメンバーは全員がダンスの訓練をしっかり受けているので、その違いは一見しただけでは判明しません。

RIOのダンスはシルキーと表現したいほど、滑らかで解釈が一つも二つも進んでいます。

例えば、ファイナルミッションでMAKOチームに入ったRIO。「虹の向こうへ」の最後「極上Paradice」と歌いながら、両手を振り上げて下ろす、というシンプルな動作があります。このときセンターのRIOだけが、他の五人とは違う動作を一つか二つ入れていますが、速過ぎて認識できないくらいです。最終的なタイミングが同じなので、全体のバランスの中には違和感なく溶け込んでいる。同時に彼女にしか出来ないダンス表現が完成して、ばちっと右ウィンクが入ります。ポーズとして最後のウィンクを入れた、というよりも私には「隠し技を一つ入れてるよ。あなたなら分かるよね」と語っているように見えました。技巧を凝らした動作がセンターで最後にばしーっと決ることで、やたらダンスの上手いグループ、という印象を与えることができます。

振り返ると、東京合宿二日目RIOのピンチがいきなり得意のダンスレベルテストで訪れます。

自分が上手く踊ることだけを考えている。私はダンスをするから、見る見ないはご自由に、というような態度に思えた。それはダンサーでしかない。僕との見えない紐を最後まで離さないように。この場では審査員である僕の為に踊るべき。J.Y.Park

自信を持って踊ったダンスについて、真正面からこのような厳しい評価を受けました。自分が得意とする項目で思った通りの評価が得られないとき、反応として「落ち込む」「拗ねる」「反発する」「開き直り、無視する」など多様な反応がありえますが、RIOは素直に修正をしていきました。またヴォーカルについても、首を楽にして下っ腹に力を入れ、歩きながらでも高音をキープするなどの基本的な項目をアドバイスされマスターしました。

韓国合宿に入り ‘Swing Baby’ を歌うころには、鋭くてハリのあるヴォーカルを身に付け、その上でもともと持っていたダンスの技を余裕を持って表現できるようになりました。以降チームの中に自身のダンス技術を溶け込ませつつ、随所でさりげなくキラりと魅せることでグループ全体のダンスの印象をグレードアップします。

RIOの選考を通じて、ダンスという強烈なひとつの才能を持った人物が、外部の建設的な意見をしっかりと咀嚼し、弱点であった歌唱力までも補いつつ自分のものにしていく過程を見ることができました。高いプライドの持ち方と足りない部分は素直に補おうとする姿勢との間に上手くバランスがとれた精神の持ち主です。

2020年12月2日発信のデビュー曲『Step and a step』で可視化された扉までの姿は、陸上競技場のようなトラックの真ん中でうずくまっています。歌い出しはRIOでした。

大丈夫よそのままで/RIO

ダンスの実力は群を抜いていましたが、歌唱力がアマチュアだと言われて葛藤する。チームミッションWe Blingの時には歌唱力のあるメンバーばかりだったから、それが鮮明に伝わってしまったのでしょう。歌の練習を沢山すること、というJ.Y.Parkさんのアドバイスを必死にこなす。

最後真っすぐ扉に向かって駆け出す姿はRIOの真っすぐな性格を表現しているのでしょう。扉の色は黄色。タマゴ大好きなRIOの色です。陸上競技場のようなところでうずくまっている姿は、TOKYO2020オリンピックが延期(おそらく中止)になって戸惑いを隠せないアスリートを表現しているのではないでしょうか。彼/彼女を鼓舞する狙いもあるのでしょう。ダンススキルではアスリートレベルにある、エネルギーと情熱で取り組むRIOにはぴったりのパートです。


RIKU – NiziU Pre-Debut Digital Mini Album Make you happy』 M/Vより

RIKU 爽やかな風が初夏を知らせる
彼女を語るのに「空手の素養」が欠かせません。

東京選考での歌唱力テストのとき、呼吸法を習っていないのになぜ出来ているのかが不思議だ、という場面がありました。

彼女は小学校六年生まで空手をやっており、 腹式呼吸の使い方が自然に身に付いていたのでしょう。武道で大切なのは正中線。当初ダンスの硬さは残っているものの、筋の通った真っすぐな線を最初から作ることが出来ていました。

空手をするとき「師範から『まず目で殺せ』と言われていた」と語り、目つきが変わります。

くるくると変わる表情の変化が彼女の魅力の一つであり、番組では頻繁にワイプが抜かれてRIKUのコメントが入ります。視聴者の生の意見を代表してくれる、いい意味での普通の反応によるコメントが関西弁と相まって小笑いを起こします。ヴァラエティに呼ばれたら、最終メンバーの中では唯一ノリツッコミが出来る人物であると踏んでいます。

(妄想バラエティでの一幕)
司会「では、メンバーで唯一セキュリティ面で不安のないRIKUさんです。」
RIKU「押忍。私に触ると怪我するよ(ここで、裏拳の演武見せる)って、なんでやねん。私も守って欲しいのに~♡」

ヴィジュアルはコミカルで真面目系なのに、素直で癖のない爽やかな質感の歌声の持ち主です。ファイナルステージで課題曲になった「虹の向こうへ」では歌唱力に定評のあるRIRIA, YUNAが担当していた難解なパートを、プレデビューのミニアルバムでRIKUが引き継いでます。癖がなくなり全体に馴染んだ上で、素直で真っすぐな声が舞台一杯にクリアに響きます。

武道の教えからか、陰で努力出来るタイプ。オーディション当時練習生としての素養がなかったにも関わらず、ぐんぐんと個人順位を上げて、最終的には2位にまで上り詰めたドリームガール。

RIKUがなぜ個人順位2番なのか。それは、東京合宿二日目。課題曲中島美嘉の「雪の華」を歌ったときのコメントに表れています。

歌う間ずっと、僕に話しかけているようでした。J.Y.Park

歌の中に入り込み、それを素直に目の前の人に語るように歌う。その後経験のないダンスパフォーマンスの評価ではさまざま指摘を受けて悔しい思いもしたはずですが、最終的にはJ.Y.Parkさんが求める歌手としての姿を誰よりも具現化できていたのがRIKUなのでしょう。

「雪の華」は恋人と歩いている情景ですが、16才の少女が歌うとき恋人は「大切な人」と置換えていい。思い浮かべていた人とは、家族や友達だったのでしょう。それがJ.Y.Parkさんにも伝わりました。

他のオーディションでは早々に落選していたのかも知れない。でもRIKUは普段通りの声で、誰よりも実際の自分の話であるかのように、語るように歌える。虹プロジェクトのヴォーカル評価のど真ん中を射ぬいた、ザ・レインボーガールと言っていいでしょう。

2020年12月2日発信のデビュー曲『Step and a step』で可視化された扉までの姿は、雲の中のはしごを登っていました。チークとリボンで小動物のような出立ちは、やっぱり徒名「元気なリス」を表現しているのかな?

RIKUさんは悪くはありませんでした。でも成長が少し止まっているように感じました。J.Y.Park

努力の方向性は分かっている。そのままの自分でいることもできる。一休みしたらいいんじゃない。

Just believe yourself/RIKU

一段一段登っているし、この方向で間違っていない。突き抜けた雲の上は明るいはずだ。だから今は留まって、一休みしてもいいんじゃない。そんなRIKUの戸惑いとその後の決意『自分を信じていれば大丈夫』が表現されていました。

刺激的な夏 RIMA, NINA


RIMA – NiziU Pre-Debut Digital Mini Album Make you happy』 M/Vより

RIMA 正確無比のリズムと英語のラップ

音楽に埋もれない、突き抜けてくる声。J.Y.Park

RIMAは最初から輝きを放っていました。お父様はラッパーにしてDJ。お母様はモデル。インターナショナルスクールに通い英語に堪能で、JPY練習生となってからは韓国語も流暢です。ビジュアルは小柄の美形、ダンスにも訓練されたキレがあります。何よりラップの自作ができて、正確無比なリズム感があります。

初期段階から感心しきりのJ.Y.Parkさんでしたが、アドバイスが高度なものでした。

一つだけ必ず直さないといけない点があります。ラップや歌を歌うとき、まだ幼いから既存の歌手の演技のマネをしてしまいます。RIMAさんはこれからの世代ですので、既存の外国のラッパーたちのジェスチャーや表情をそのままマネしないで欲しいです。RIMAさんの普段の性格はどうですか?

最初はすごく人見知りな性格なのですけど、こころを開いたらすごく明るくて楽しい性格です。RIMA

今話したときの表情や話し方が歌やラップのときもそのまま出てきて欲しい。典型的な表現はしないでください。J.Y.Park

RIMAの場合は生まれ落ちたその時から環境に恵まれている。それ故に環境のおかげではなく自分自身の力を証明せねば、という切迫感が表情に出ていました。既存ラッパーたちの仕草、雰囲気を真似ることに血道を上げていたのでしょう。そうではなく、自分自身であって欲しい、という要望は難しくも、彼女にとって大変挑戦しがいのあるものでした。

以後段階が進むにつれ、彼女の表情・歌声・ダンスはよりリラックスしていきます。

チーム’We bling’のときに自由度が増し、マヤチームのBoom Boom Boomのラップで覚醒しました。

‘I’m that girl どこ見たっていない、Ain’t so easy 止めらんない Hit you like WOW’  RIMA

このWOWが最高ですね。こんなクールなWOWはかつて聴いたことがありません。学習能力の高い、きらびやかな才能に溢れた個性が、殻を破る瞬間です。

今後どんな新曲が出ても、英語・韓国語・日本語ラップパートのメインを張るのはRIMAで決り。曲半ば、テンポが早まりRIKU→ MAYUKAと繋いだら、アテンション・プリーズ。突き抜けてくる、リズミカルな高速ラップの始まりだ。

2020年12月2日発信のデビュー曲『Step and a step』で可視化された扉までの姿までの姿は、ブロックの中でした。右を押してみると、左からブロックが出てくる。左を戻すと右が出てくる。

華々しい才能の持ち主が、自分らしさを見つけるまでの過程が描かれていますね。それは苦悩している、というより遊んでいるように観えるし、最後ブロックを組み替えてドアにしてしまえばいいのだ、という表現にはうなりました。RIMAが本来の自分を取り戻すのに成功した瞬間です。

『Step and a step』のラップはNINA→RIMA→MAYUKAと続きました。日本語と英語のミックスでこれだけかっこよくラップを聴かせられるのは、今後10年ぐらいのお手本になっていくのではないでしょうか。子音と母音の組み合わせが自然でかっこいい。

いつだってNever too late. Okay/RIMA

このOkayが優しいですね。かっこいいラップからOkayへの切り替えは同じ時期にJYP練習生となったMIIHIへ語りかけているものだからと感じられました。


NINA – NiziU Pre-Debut Digital Mini Album Make you happy』 M/Vより

NINA 入道雲と向日葵照らす夏の太陽
C’mon, Let’s GO!など、英語で勢いをつける高音はNINAのもの。グループ最年少のさみしがり屋だけど、一見した雰囲気はカリフォルニアガール。

地域予選の時、NINAは名古屋在住にも関わらず、仙台でオーディションを受けました。虹プロジェクトのことを知ったときにはすでに、名古屋オーディションが終わっていたからです。出会いからしておっちょこちょいで、憎めない末っ子NINA。

Brand New Day/安田レイ の歌い出し「風の匂いが変わって」で、J.Y.Parkさんはモニターを確認。驚きを隠せません。安定した高音が最後まで響き渡ります。

その高音があれば、プロデュースするときにどれぐらい有利だろうかと思いました。今回のグループにこれで、自信が持てました。J.Y.Park

結果からすれば、このワンフレーズでガールズグループの高音パート担当に決ったようなものでした。過程から言えば、NINAの苦難の始まりです。手足が長いため、ダンスのリズムが掴めなければ悪目立ちしてしまいます。東京合宿でダンスを披露したときのこと。

この2ヶ月の間、練習せずに遊んでいた人みたいです。今日はアドバイスできるレベルではありません。J.Y.Park

と痛烈な批判を浴びてしまいます。ここで簡単にめげないのが強心臓のNINAです。ボーカルテストでは、伴奏の出だしを指示し、さらに自作の振り付けや、ラップも披露します。タレントではイントロ曲を自作して、ラジオDJとなり、さらに歌も披露。タレント性を見せつけました。

その後韓国語に苦戦して、なかなか歌詞が覚えられなかったり、ダンスの導線が読めなかったり、苦悩が深まります。パフォーマンス会場で、素晴らしい演技なり歌唱力なりを他の練習生が見せるたび、彫りの深いNINAの悩ましい表情がクローズアップされます。自分の実力では敵わない。もうダメだ。でもがんばらねば、といった内面が表情に素直に表れては移ろっていきます。「何このダンス、マジ段違いなんですけど」「ラップやばっ」「WOW!」といった驚きも隠せない性格。

レベルの差が鮮明になるにつれて得意の歌唱力についても、自分の弱点をカバーするかのように、見せつけるように歌ってしまい、リズムに乗れない。訓練をつみ、ダンスに自信がみなぎるようになったのは、RIMAチーム’We bling”のメンバーになってからでしょう。

UP up up up up we go 絶えずに上に/RIRIA
絶対止まらないで/NINA
No one can stop us now みんなblah blah/RIMA

の三連段はいわば高音のジェットストリームアタック(アラフィフ限定のガンダムネタで失礼)。その後悪目立ちしない安定的なダンス技術を手に入れて、見事9番目のNiziUメンバーとなりました。馴染んでしまえば、手足の長いスタイルがNiziUのビジュアルに欠かせないものとなりました。

11月に迫るデビュー曲の中、サビの盛り上がりを見せて、高音域に入ったとき待ちかまえてください。グループの世界展開を考えたとき必須となる、正確な英語発音での高音部が炸裂しNINAがこれでもか、とどや顔します(同時にJ.Y.Parkさんもどこかでどや顔してるはず)。欧米か!

上記の記載をしたのは9月でした。2020年12月2日発信のデビュー曲『Step and a step』で可視化された扉までの姿は、階段を上がって中間で途方にくれています。でも、歩んできた足跡を見直してみようというポジションです。

好奇心旺盛で、何でも新しいことをやってみようという気質の持ち主。登るべき階段が在りすぎて選択肢に困ってしまう、というストーリーですね。

目を閉じてすませば見えてくるよ/NINA

高音域をただ出すだけではない。よ↓よ→よ↑とビブラートが聞いているようであり、聞き応えがあります。好奇心のままに周りを見渡すのもいいけど、目を閉じてみよう。そこに自分の強み、高音域にさらに感情を込めることができて、扉が開かれました。

収穫の秋 MAYA


MAYA – NiziU Pre-Debut Digital Mini Album Make you happy』 M/Vより

MAYA – 実りの秋、癒やしの雰囲気を味わおう
秋の雰囲気を体現するのはMAYAです。彼女はオーディションの最初から「ダンスと歌唱力に足りない部分を全て隠して余りある、豊かな表情と演技力」が評価されてきました。

表現力というのも得難い才能の一つです。

その曲が持つ物語の中に深く深く入り込み、自分のものとして表現するとき初めて表れる自然な表情と歌唱力。Make you Happyの中で「全部あげたいの」という歌詞がありますが、この「ぜ」の音に説得力を持たせてくれます。彼女が「ぜ」に感情を込めて歌ってくれるから、その歌詞に偽りがなくなるのです。

少なくとも本人が嘘ではないと思い込む必要があるのですが、この能力は「周囲の物事が自分事として感じられてしまう」ことでもあります。プロフィールによると、彼女は石川県の中学を卒業してから、そのまま東京のYG ENTERTAINMENT JAPANの練習生となりました。その後、本国YGEでは2019年に不祥事があり、日本法人のガールズユニット構想が一旦白紙に戻ることなり、日本での練習生は一端解約となります。以後行き先が全く不明でどうしようか、という時期に今回の虹プロジェクトのオーディションを受けた、というタイミングになります。

中学を卒業したばかりの地方出身の少女が、晴れて東京で韓国のエンターテイメント会社の練習生になれたと思ったら、約一年でデビューへの道が頓挫し、いきなりコンクリートジャングルに放り出される。考えただけで途方にくれませんか?虹プロジェクトの初期映像が残っていますが、彼女はいつも不安顔で、どうしよう、どうしたらいいという気配が漂っていました。

彼女が輝きを放ち出すのは、ユニット「ミスター・マドンニ」のメンバーとしてSwing Babyを披露してからです。

料理が得意でふるまい上手。普段面倒見のよい「お母さん」なんて呼ばれているようですし、実際にそうなのでしょう。ただチームのパフォーマンスを全部自分事として受け止めてしまう過剰な感受性とも表裏一体です。ミスター・マドンニとしては、実力ナンバーワンのMAKOという年上の女性と組むことができ、RIOと一緒にチーズインハンバーグを頬張る姿からはトレードマークのように張り付いていた思案顔がなくなっています。番組でファミリーメッセージがちらっと写りましたが、ご両親と兄との四人家族のようですので、本来の妹としての立場でリラックスできたようです。

コンディションの良いときのMAYAの演技力と包容力、そして物語を深く理解しているが故に、自然に出てくるお茶目なアドリブが魅力的です(RIKUの空手演武の物まねはぜひヴァラエティでリクエストして欲しい)。Swing Babyは、MAKOの快活な歌声やRIOの鋭い歌声とダンスに、MAYAのやや低めの歌声と深い解釈から醸し出される表現力が加わり、宝塚歌劇団のミュージカルを観ているようなクオリティの高い作品が仕上りました。

MAYAの特徴で、もう一つ忘れてならないのが小気味よいリズム感。J.Y.Parkさんが「MAYAさんのラップが、いいですね、おぉ」とコメントしているように、歌の随所に豊かでメリハリの効いた強弱がつきます。周囲の状況をよく把握できて且つリラックスできたなら、悪戯好きな彼女からはお茶目で愛くるしいアドリブがぽんぽん飛び出るはず。九人でパフォーマンスを繰り広げるとき、どうしてもセンターの位置にいるメンバーに目線が奪われますが、MAYAはあちこちのパートで歌に合わせた表情を創っています。深い解釈の上にのみ成立する自由奔放さが、MAYAの魅力の真骨頂です。Dive to Freedom, Yeah!

2020年12月2日発信のデビュー曲『Step and a step』で可視化された扉までの姿は、特別な役割を担っていました。不思議な船に乗って、望遠鏡で無人島にいるMIIHIを見つける、という役割です。

船を横からみると折り鶴のように見えますね。MAYAと言えば、紙芝居「みにくいアヒルの子」が有名です。和のイメージもあるので、この船は折り紙の白鳥を模したものなのかも知れないですね。曽我は『折り紙白鳥号』と呼んでいます。

どうしていいのか分からなくなってしまったMIIHIに微笑を向けることができるのは確かにMAYAしかいないのかも知れません。言葉ではなく、微笑みで。

いままでこのような関係の友達を作ることはできなかった。MAYA

心からメンバーに手を繋ぐことができるのはMAYAの役割です。でもそれはMAYAがMIIHIを迎え入れている、という形ではありません。中学を卒業して、こころのよりどころだったダンスしか残されていなかったMAYA。デビューの晴れ姿をおじいさんに見せることもできなかった。練習生だった前の日本事務所は解散してしまった。自分の足りない部分を考えると途方にくれるけど、今はこうやって仲間がいるから安心してよ。一緒に歩こう、という誘い、もしくはMAYAからの切なる願いでもあるのです。

つまずいてしまったのは、前に進んでたから/MAYA

Step and a stepの中間部での歌詞にははっとさせられました。MIIHIの現状を肯定しているようでもあり、MAYA自身のつらかった過去を振り返るようでもあり。そしてコロナ禍に生きる世界中の人々へのエールでもあります。真ん中の「は」がほとんどため息のような音になって優しく聞こえるか聞こえないかのよう。この歌詞をみて、MAYAが解釈した歌い方なのでしょう。「の」で終わると、女性らしさが前面に出ます。「は」をはっきり言うと中性的。その中間のため息の表現によって肯定する包容力が膨らみました。

凍てつく空から一筋の透明な光 MIIHI


MIIHI – NiziU Pre-Debut Digital Mini Album Make you happy』 M/Vより

MIIHI – Nobody but you あなただけ
メンバー紹介も最終段階。いよいよMAYAの醸し出す秋の雰囲気が深まりつつ、冬のイメージMIIHIの到来です。

個人レベルテストでMIIHIが披露した ‘Nobody/Wonder Girls’ は、人を強烈な混乱に陥れます。

他の事務所の練習生だったら、「奪いたい」と思ってしまうほど。J.Y.Park

凍てついたにび色の遙かな上空から、舞い降りるように聞こえてくる歌声だが、衣装はきらきらゴールデンで体のラインを強調するセクシー系。アップで映る顔の表情にはまだ幼さが残っているのに、演技は妖艶。天使のイメージかと思えば、堕天使の魅力が振りまかれ、当時十五才の幼さが残ると思えば、ダンスは洗練された大人のそれ。

歌、ダンス、表現が素晴らしい上、感情もしっかり伝わってくる。J.Y.Park

歌声は、透明で繊細なのに芯がある。彼女は、京都のティンカーベル・ミュージックスクールにて幼少のころからヴォイストレーニングを受けていました。高音パートが透明な響きを奏でる上に、芯が通って強いのは訓練のたまものなのでしょう。

二位で前回の評価を終えたとき、不満そうでした。よい意味で欲がある。自分は特別であり、二位や三位ではなく、一位であることを証明して見せる、という表情でした。J.Y.Park

普段の話し方はおっとりしているのに、奥に秘めた競争心もある。Very Very Very/I.O.Iをカバーしたときにも、本番前にこんなコメントが残っています。

感覚やフリも全部自分たちの身体にほら、染みついているから。舞台にいったらなんも考えんと、楽しんでがんばろ。もらお。で、1,2,3位の中にMIIHIたちの名前がボンッて。MIIHII

チームSun Riseが見事勝利して大喜びの瞬間なのかと思いきや、突然泣き出してしまい、周りがびっくりするという画面がありました。行動も言動に大きなギャップがあり、蠱惑的な雰囲気を持つアイドル気質です。ただ身体の線が細過ぎて体調が悪いとパフォーマンスが安定しないことがあり、J.Y.Parkさんからも食事の心配をされるほどでした。Nobodyのような、繊細で切ない曲をしっとりと歌い上げるとき魅力は増大しますが、ダンサブルでビートの聴いた歌(例えば、チームミッションMAYAチームのときの’Feel Special’)になると、単純に筋肉量が足りず、華奢な身体運用が彼女を悩ませます。なんにも出来ないのは百も承知なのに、なんとかしてあげたい、と思わせる儚さ、危うさがあります。

彼女は歌手としてソロデビューしても既に通用するレベルにあります。今後出てくる曲の中に、バラードがあったらMIIHIに注目です。妖艶さと幼さを合わせ持った女神、もしくは堕天使から、さりげなく抵抗できないように誘われること間違いなし。

2020年12月2日発信のデビュー曲『Step and a step』で可視化された扉までの姿は、無人島で大好きなピンクのぬいぐるみやアイテムに囲まれて途方にくれています。

秋のイメージのMAYAが冬のイメージのMIIHIと手を繋ぐ。花咲き誇る、みんなの待つ春のイメージへと合流する、というのは納得のいくエンディングとなりました。デビュー曲で四季をぐるっと巡ったような気になります。

MIIHIについてはとにかく無事を祈ります。お母様の美味しいご飯を沢山食べて、ぐっすり眠って、また戻ってきて欲しい。

どんなときも隣でいつもそっと笑顔くれるの My friend/RIMA

同じタイミングでJYPの練習生となったRIMAがこう歌いあげてくれると、アラフィフおじさんの目には涙が宿るのでした。

頬に触れてく風感じてみて/MIIHI

この歌詞はJPYが考えたものだろうか。風を感じてみて、という言葉は村上春樹のデビュー作『風の歌を聴け』を思い出させます。この作品は1979年初版発行ですが、内容は1970年の夏の日々を綴ったものです。

韓国でも村上春樹は人気があるので、そのデビュー作をJ.Y.Parkさんも読んでいるんじゃないかな、と考えてたくなる(下記英語の看板でも、古代ローマ人プブリリウス・シルスの言葉が引用されていることから、哲学文学に造形が深いとにらんでいます)。

何をやってもうまくいかない。どうしよう、どうしたらいい。生き方が分からない。そんな哲学的な問いに、文学は何度も立ち向かってきました。今はただ、目を閉じて風を感じるだけでいい。2020年の夏の日々はどうだっただろう。風の歌を聴こう。その後で、ゆっくりとAnd a step! という思いが込められた歌詞なのだ。

『応用編』ユニットの楽しみ方 『Sun Rise』 vs. 『ミスター・マドンニ』 vs. 『Harmonies(仮)』

メンバーひとりひとりの強みとその特徴が頭に入ったところで応用編に参りましょう。

九名のグループなので、三名ずつのユニットを作ることができます。以下三つのカバー曲を歌うユニットがファン投票したら、それぞれの好みが分かれて、いい勝負が期待できそうです。

チームバトルの時、AチームとBチームに分けるのはくじ引きだったのですが、仮にもしMAKOチームとRIMAチームが争っていたらどちらが勝ったかな、と考えてしまいます。価値基準をどこに置くかによって、勝敗が変わってくるからです。

SUN RISE
AYAKA, RIMA, MIIHI

「冬の女王」MIIHIが、春をイメージさせるAYAKA、夏のイメージのRIMAと組んだチームユニットがあります。Very, Very, Very/I.O.IをカバーするユニットSun Riseを聴いていると、冬のイメージからまた一年がめぐり、春が訪れ、夏を楽しめます。
「こんな私のこと、理解して欲しいの」といいながら、ぽかーんと頭を小突く振り付けを観れば、心にぽかぽかの春到来。本来二人分の長尺ラップをRIMAが苦しげなく歌い上げるころ、気分は最高潮です。かと思えば、天井からMIIHIの美声が舞い降りてくる。透き通る高音に酔いしれるころ、またセンターに春到来。和菓子なら、甘いしょっぱいお茶で一服、また甘いしょっぱい、の繰り返しが飽きないように、可愛らしさコンセプトの無限ループを視聴しているような陶酔感に襲われます。

ミスター・マドンニ
MAKO, RIO, MAYA

経験者年長組(順位上級者、ダンス経験者、元練習生)三人が組んで圧巻のパフォーマンス。チームとしてのダンス・タイミング、三人の表情・演技力、全てが高水準過ぎて逆に語ることがありません。観客の反応を観察するほうが面白かったりします。

出だしからニヤリ笑顔のJ.Y.Parkさん「さ、やってみようか」→審査員というより、もう観客としての立場。
控室全員のりのり→楽しげなパフォーマンス始まった。お姉ちゃん達かっこいい。
MAYAのアドリブ「踊りませんか」、に破顔のJ.Y.Parkさん→「うん、踊る!」
隣観客席YUNA 悲しげ→もう無理。負けた。
隣観客席RIKU 諦め顔→君ら、そのメンツで全力出すの反則やろ。
控室NINA, AYAKA のりのりの笑顔→たのしい!
最後の決めポーズ→J.Y.Parkさん笑い声。控室全員歓声。

Harmonies(仮)
この二つのユニットの実例を観てしまうと、残りの三名 RIKU, MAYUKA, NINAにもカバー曲でのユニットを組んで欲しくなりませんか。三つのユニットでファン投票による勝負をもう一度やったら、チームごとの魅力が拮抗して盛り上がるコンテンツができるはず。

RIKU – 安定した高音域と、正中線びしっと整ったぶれないダンス。ユニットリーダーはRIKUがいいです。普段話すように歌える実力の持ち主。このユニットは語りかけるように歌を聴かせるんだというメッセージ。
MAYUKA - 健康的なセクシーさが特徴。テニス3セット終わった後のとびちる汗とタオルが似合う、爽やかスマイルの持ち主。プレデビュー曲 ’Make You Happy’ を聴けば、あちらこちらでMAYUKAのハモりが効いていることが分かります。RIKUの安定した歌声にアクセントをつけ、さらNINAの高音に厚みを持たせるハモりで、そのカメレオンぶりを発揮しますがソロパートではいかんなく地声で「騒ぎまくろお~ねぇ」。
NINA – アドリブで聞かせる高音がグループの中で唯一無二。またハーフであることから抜群の足長小顔スタイルなのでビジュアルをもっとアピールして欲しい。

この三人が歌うカバー曲は、TWICE/Dance the night away。これはチームミッションで課題にもなり、ユニットSeaside Fairiesが歌いました。今回こちらのチーム名は「Harmonies(さまざまな調和音)」。Seaside Fairiesの時MAYUKA, NINAはメンバーになっているので、そこにRIKUが加わったとしたら、という妄想で曲を聴いています。充分他2チームと色分けが出来て、伍していけるパフォーマンスが期待できます。

選考外にこそドラマあり

一つ考慮にいれておかなければいけないのは、放送されている映像は約2ヶ月後に編集された上で発信されている、ということ。実際に収録があって、それを編集して放送する前には、勝敗の結果、順位の結果が出ているという事実ですね。

つまり編集担当は、結果を知った上でオーディションドラマを盛り上げないといけない。すると、どうしても結果ありきの編集になりがちです。勝った練習生なり、キューブをもらった練習生の録画時間を増やすようになります。逆に言えば、選考から外れてしまう練習生はもともと編集の時間が割いてもらえない。必然的に視聴者側の反応も薄くなってしまいます。

もともとの情報が意図的に少ないことを念頭に置きながら、選考から外れてしまった理由を探ります。最終的には一人の審査員、J.Y.Parkさんが考える、倫理観・人柄といった項目が求められる選考からは外れてしまったものの、持っている才能は健在です。今回の応募一万人の中から、13人に選ばれただけでも相当の努力が今までにあったはずです。

JYPの虹プロジェクトの成功に触発されてか、K-POPの他大手事務所でもガールズグループのオーディションを計画しており、2020年以降他のオーディションで、彼女達を見かけることがあるかも知れないですね。

メンバーから惜しくも外れた練習生の紹介
AKARI
何かを話すとき、自然な笑顔があふれ出す。チアリーディングの経験があり身体に伸びやかな柔軟性があり、自然な元気を見る人が受け取ることができます。「リズムに乗るのが楽しいし、踊り切ったときに『あ、やり切ったな』と思えるのがうれしい」という初期のコメントからはMAKOのような、自然なストイックさが伺えます。

作り上げた明るさではなく、本当に体の中から出てくるものすごいエネルギーがある。J.Y.Park

しかし地方予選が終わった後、扁桃腺の摘出手術を受けたり、病気で伏せってしまいがちな時期が丁度この選考と重なってしまいました。一ヶ月ほど入院生活を送っていたことを隠して望んだ東京合宿のダンスレベルテストでは、踊り出しの最初から、J.Y.Parkさんから厳しい目線が刺さりました。

今日のパフォーマンスは本当にがっかりしました。何を考えてここに来たのか分かりません。AKARIさんは才能に恵まれているけど、努力をしない人なのかな、と思います。このチャンスはAKARIさんにとってそれほど重要ではないのですか。動作の合間合間に才能が見えます。でも今日は地方予選ではないのだから、本当にがっかりしました。もうこのようなチャンスは二度とないのかも知れないから、どれぐらい必死なのかを今後は見せて欲しい。J.Y.Park

その後に続く個人レベルテスト、チームバトルにおいても、才能のきらめきが一瞬一瞬光るものの、体調不良によりパフォーマンスが安定しません。初期の言動とその後の態度を見る限り、本人の管理不足というより本当に身体が言うことをきいてくれなかったのだろうな、と想像してます。

彼女のパフォーマンスの白眉はファイナルミッション「虹の向こうへ」の中「小さな自分のHeart 時々Down悩んで」「傷ついて泣いても」「いぃ一度しかないのなら無駄にできないわ」のフレーズです。当時自身が置かれた立場(個人順位の低迷)と相まって、この「いぃ」の歌い出しと鬼気迫る表情と滑らかなダンスが秀逸でした。ビジュアルは笑顔とロングの髪が神々しい。おそらく選考陣を最後の最後まで悩ましたものの、体調への不安が以後も拭えないという判断からの落選だったのではないでしょうか。一人のパフォーマンスが体調により安定しない、その不安が払拭できないのはガールズグループにとって致命傷であり、ビジネスとして今回は諦めざるを得ない。

華のあるルックスと、余裕を感じさせる美声をもう一度聴きたい。体調とメンタルのコンディションを上手く調えることさえ出来れば、別オーディションでの挑戦は充分あるはずです。
INSTAGRAM → @akari.0903

YUNA
JYP練習生としての期間はMAKOと同じくらいで、選考当初からその実力には太鼓判が押されていました。

にもかかわらず、選考から漏れた理由は「実力の悪い意味での高止まり」だと私は判断しています。他の練習生を観る目が「私の方がこの業界を昔から良く知っている」と物語っているようでした。

確かにハイトーンボイスを安定的に聴かせられる、という強みはあったのですが、ダンスと合わせながら曲の物語に入っていけていないようでした。渡邊直美が切り開いたぽっちゃりの体形でも唯一無二のタレント(YUNAの場合、はりのある美声)で魅せる、という方向性もあったはずです。誰よりもアイドルになることを強く願い、早くから練習を重ねていたYUNAだけに、今回の落選は歯がみするほど悔しいことでしょう。

高止まりした才能をさらに伸ばせるのか。その長所に「謙虚に」なれるのかがカギとなります。

技術に問題なくて成長の跡が見られないのなら、あとは態度の問題です。J.Y.Park

こういう厳しいコメントを向けられるのは、YUNAが持つ精神の芯の強さを信頼しているからこそなのです。成長を妨げているのは間違ったプライドの持ちようなのだ。

上司でもトレーナーでもなく、すぐ隣にいる同期に「ねぇ、本当に分からないから悩んでいるのだけど、私には何が足りないんだろう。ダンスとか歌唱力とか実力あるって言われているんだけど、評価は低いままだし。『普段通り楽にして』って、どうしたらいいのかな・・・君はどうしている?」って、素直に訊けるかどうかがカギとなります。
INSTAGRAM → @you_nd_na

RIRIA
少し鼻にかかる癖の強い声ですが、しっかりとしたハリがあります。ダンスも女性らしい美しい線を描くことができますが、残念なことに基礎体力がありません。ダンスブレイクが入るとその後の音程がずれるので、ダンスのステップを省略した上で個人レベルテストに臨まざるを得ませんでした。「毎日自分にムチ打って努力できるかにかかっている」という個人レッスンの評価。

僕は自分がやらないことをみなさんにやってください、とは言いません。僕は昨日も一食しかご飯を食べませんでした。理由はダンスを上手く踊りたいから。J.Y.Park

体重を落とした上で体力は向上させ、ダンスのキレを取り戻す。歌唱力は一瞬のきらめきではなく、息切れせずに不安定にならないで最後まで歌い切れるかが求められます。アイドルになる、というのは並大抵の才能と努力では難しいことの証左となったRIRIAの落選でした。
INSTAGRAM → @happririana

MOMOKA
ビジュアル、歌声ともに才能のきらめきが観られますが、練習生としての経験のなさから、虹プロジェクト内では当初自分への自信を持てず、最下位の13位を早々に2回取ってしまい、既定により脱落。訓練を受けるまでは自分は無理だとあきらめてしまったのでしょう。行けるかも、と気付くころには選考が終わった印象です。彼女はまだまだ若いです。大器晩成型なのかも知れません。別のオーディションに出場したときの成長ぶりが楽しみな逸材です。
INSTAGRAM → @momoka.0824

ところで、映画館風建物の表看板の英語の意味は?

デビューする練習生達のプロフィールを振り返り、番組の中で語られた言葉を考察する内に、看板の意味が分かりました。


NiziU Pre-Debut Digital Mini Album Make you happy』 M/Vより

NiziUは、虹プロジェクトから始まった。
この瞬間、全部見せるよ。もっと輝くには時間かかるかもだけど、
今はただ君を、ハッピーにしたいだけ。
(※曽我の意訳。逐語訳は以下の通りです)

Our story began with NIZI PROJECT
私たちの物語は虹プロジェクトで始まった。

All my possession for a moment of time
直訳: すべての持ち物をこの一瞬に
意訳: 持てるすべての才能をこの瞬間に(見せる/ぶつける)

It takes a long time to bring excellence to maturity
直訳: 成熟に卓越性をもたらすには長い時間がかかる
意訳: 自分の長所を伸ばすのには時間がかかる
超訳:自分の長所に胡坐をかかず、時間をかけて謙虚に磨き続けよう
(プブリリウス・シルス Publilius Syrus(古代ローマの喜劇作家 紀元前46~29年頃活躍)の名言とされています。
J.Y.Parkさんは倫理や人柄を重んじていることから番組の中の言葉を参考にしながら意訳してみました)

I just wanna make you HAPPY
今はただ、君をハッピーにしたいだけ!

最後に

2020年9月日本では、働き方改革とか言いながら首相自ら体調不良を理由に退陣。中国との関係は尖閣列島の領土問題がくすぶり続けています。お隣韓国とは戦後最悪の国家間関係と言われ、トランプのアメリカには言いなりの日本。年初から降って沸いたコロナ禍が未だ燻り続けている令和の世に、NiziUのような元気なグループの誕生は、久しぶりのgood newsとなりました。

韓流文化だからといって必ずしも韓国人が歌う必要はない。韓国のコンテンツを海外に出したが、これからはシステムを輸出しなければならない段階だ。J.Y.Park

このコメントは十年以上前のものです。その後彼は韓国と海外の人材を交えてTwiceをプロデュースし、今回K-POPノウハウで、直接人材を集め、育成しデビューまでたどり着かせるビジネスを構築するところまで来ました。韓国発ではあるが、K-POPのカテゴリーではない。純粋ジャパニーズ・アイドルとも違う。K-POPフォーマットを利用して、直接現地で採用[3]したのが、今回のNizuUなのだ。

▲K-POPを少し勉強すると、K-POPとJ-POPを単純比較して、その優劣を分析したくなったりしますが、ダンスとは単純にキレを比較するだけのものではありません。こちらのyoutube動画では、ダンスの奥深さや『盆踊り』の本質などなどが語られていて、大変興味深いです。日韓英米関わらず『アーティストの癖を愛でる作法』が述べられていて深い説得力があります。

Niziuの本質はRIMAへ最初に投げ掛けたこの言葉に集約されています。

I could tell (that) you have talent(s). All you have to do is just be yourself, relax, and let yourself fall into the music more instead of trying to do well. 君は、もう才能に溢れているのが分かる。上手くやろうとせず、自分自身でいて。肩の力を抜いて、もっと音楽に身を任せるんだ。君はすでに特別な子。J.Y.Park

まだプレデビュー曲としての位置づけの「Make You Happy」を聴いてさえ、曽我の日常には彩りが加えられました。「Baby, I’m a Star」を聴いて、我々おじさんだってまだまだやれるぞ、という気持ちになれる。

Always remember just ‘Be yourself’. That’s enough. 「覚えていてください。いつもあなたでいてください。それだけで充分なのだから」J.Y.Park

私にとって『自分自身であれ』って、どう表現したらいいのかな? そう悩みながらも、たゆまぬ努力で自分を磨き続けるアーティストたちが、今日も世界のどこかにいる。

NiziUメンバーの色分けが出来て個性の輝きの濃淡が分かれば、デビュー曲『Step and a step』でどうやってみんなが扉を開けているかが分かります。まさに九人が九人違います。

つまずいてしまったのは、前に進んでいたから/MAYA

歌詞の内容が簡単に理解できるのに、言っている内容は深いです。自分を信じて、前を向いて歩いていこう。つまずいてしまったのは、前に進んでいたことの証左なのだから。


  1. 振り付けにはKiel Tutinさんが配置されているようですね。求められているダンスレベルを見ても、世界を取りにいくのだ、という意気込み、JYPの本気度が感じられます。
  2. ガールズグループを構成するとき、メンバー内での『仲の良さ』に気を使うことになります。ダンストレーナーたちが、本番の映像を見ながらその感想を述べる、というYoutubeがあります。この映像を見ていると、ごくごく普通のお姉さまたちの、教え子を応援している姿を確認できます。トレーニング中の雰囲気とは異なって、リラックスした姿に驚きほっとします。辛辣なコメントや指摘を遠慮なくするのも、ある程度意図的なものなのではないか、と考えています。ガールズグループ内の仲を良好に保つ為に、トレーナー陣はメンバーに対して「共通の敵」として振る舞い、がんがん鍛えていく。K-POPの人事掌握のマネージメントも調べると面白いかも。
  3. NiziUの採用と今後の展望を抹茶ティーラテになぞられる秀逸な記事ご紹介します。PDFで開きます。
    “K-POP日本版”が意味すること──JO1とNiziUは抹茶ティーラテになるか(松谷創一郎) “
2020.9.5