村上春樹「騎士団長殺し」を読んで「ねじまき鳥」のなぞを一個解いた、というお話

2019年3月1日に「騎士団長殺し」が文庫化されました。

それを記念して、雑誌「波」の中で俳優の高橋一生さんが書き下ろしの書評エッセイを書かれています。

web siteを検索してみたところ、なんと全文が書いてありましたので、ご案内いたします。

【『騎士団長殺し』文庫化記念特集】高橋一生 「騎士団長殺し」に出会う

※PDFにてもご確認いただだけます。

記事作成日 2017/02/26
記事更新日 2019/03/01

この記事の目次・索引

  1. ご挨拶
  2. この名言を覚えていますか「時間をかけることを・・・」
  3. The best revenge is to live well.
  4. だから、よく生きることが、最高の復讐になる。
  5. 【騎士団長殺し】p71に出てくるフレーズ
  6. 疑問を投げっぱなしにして回収しない、という批判
  7. お問い合わせはこちらから
  8. 参考資料・価格・PDF

ご挨拶

全国の村上主義者のみなさん、こんにちは。曽我真です。

「騎士団長殺し」が2017年2月24日に発売されてから、ハルキストがどうのこうの、って話題になってますが、地下に潜る村上主義者は意に介しませんよね。

実は今回長年謎のまま回収されていなかった個人的な疑問が、「騎士団長殺し」を読んでいる途中で一つ解けましたので、もしくは、解けたような気がしましたので記事にしてみました。早速行きます。

この名言を覚えていますか「時間をかけることを・・・」

「ねじまき鳥」で頼りになる叔父さんのセリフがありましたよね。

「時間をかけることを恐れてはいけないよ。たっぷりと何かに時間をかけることは、ある意味ではいちばん洗練されたかたちでの復讐なんだ」

私は本日「騎士団長殺し」を読むまで、このセリフの言いたいこと、意味合いが分かりませんでした。
もちろん、これはあくまで私個人の疑問であり、とっくに得心のいっている方もいるでしょう。ただ、少なくとも私の中ではうまく回収できずにいたので、今回の「騎士団長殺し」にはひそかに期待していました。
流れとして「ねじまき鳥」系の井戸を掘っていく話なのか、それとも「カフカ」的なカラフルでファンタジックな話なのか。曽我は前者を希望していたのです。2月24日書籍が届き、第1章を読み始めたところ希望は叶えられた、と確信しました。

The best revenge is to live well.


洗練された形の復讐、と聞いて曽我が思い浮かべるのは英語の慣用句。

The best revenge is to live well.

です。このフレーズの意味するところには合点がいっていました。

誰か復讐したい人がいたとしても、それを直接遂げることは社会的に問題が発生します。例えば、端的な話その相手を物理的に消し去ってしまうと、こちらの心の中に懺悔が残ります。おまけにこちら側には社会的な地位が損なわれてしまいかねないリスクがあります。

復讐するつもりで、自分が不幸になってしまっては相手の思うつぼですよね。物理的に殺傷ではなく、何がしかの影響力を行使して社会的な抹殺を試みたとしても同じこと。

自分の中にしこりが残ってしまって、復讐を遂げた相手のことが自分の心から離れないとすれば、それは相手にまだ拘りがあり翻ってこちらの心的負担が増えていることになります。

だから、よく生きることが、最高の復讐になる。

つまり、自分が充分満足するような形で生きていて、その復讐したい相手さえも綺麗さっぱり忘れることができれば、全く意に介さないことができれば、それが最高の復讐になります。復讐という気持ちが消えてしまうこと、そして他人も羨むくらいの生活が送れれば、復讐の相手も「くやしい」と思うかも知れない。思わないかも知れない。どちらでもかまわない。そう、それこそが

ある意味ではいちばん洗練されたかたちでの復讐

となるのです。洗練というのは、自分が不幸になってしまうようなリスクがない、ということですね。社会的な地位を脅かされることがない洗練された方法。それがto live wellなのだ。そこまでは理解できていました。ただ、その前の部分、

「たっぷりと何かに時間をかけること」

との結びつきがよく分からなかったのです。

【騎士団長殺し】p71に出てくるフレーズ

曽我はまだ「騎士団長殺し」を全部読んでいません。1Q84以来長編は7年も待たされていたのです。じっくり読み進めたいです。しかし、第1部「顕れるイデア編」を読み始めて「ねじまき鳥」系の流れを確認できたところで、心おどってドキドキが止まりません。そこでp71まで貪るように読んだところ、こんなフレーズがありました。

とにかく、どこかで流れが間違った方向に進んでしまったのだ。時間をかける必要がある、と私は思った。ここはひとつ我慢強くならなくてはならない。時間を私の側につけなくてはならない。そうすればきっとまた、正しい流れをつかむことができるはずだ。その水路は必ず私のもとに戻ってくるはずだ。

ここまで読んだとき、長年の疑問が解消されました(少なくとも私の中では・・・ですが)。

疑問を投げっぱなしにして回収しない、という批判

村上春樹の小説には「疑問が回収されず、読者に投げられっぱなしで小説的責任を回避している」などという批判があるようですが、放置ではないのです。小さな声で語られる、良いニュースをこつこつと拾いながら読みたいですね。

お問い合わせはこちらから

「騎士団長殺し」における「ねじまき鳥」の謎解きについてみなさまからのご意見をお待ちしております。

参考資料・価格・PDF

参考資料は全てPDF形式で閲覧可能です。サイトが突然消えても記事は閲覧できるようにPDF形式で保存しておきました。発信元ソースは下記に明示する通りです。ご安心して閲覧くださいませ。

村上春樹研究所「ねじまき鳥クロニクル」の名言集

村上春樹『騎士団長殺し』の装幀が生まれるまで。 | カーサ ブルータス

記事公開日: 2019年03月01日

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